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2018年9月16日 (日)

虚空遍歴

山本周五郎『虚空遍歴』(新潮文庫)は長編時代小説である。文庫本上下巻である。
旗本の次男が侍の身分を捨てて浄瑠璃の世界に生きようとする。自分を殺して忠義に生きるステレオタイプな時代小説の対極にある作品である。明治や昭和から見た封建社会とは異なり、21世紀の現代人に響く内容がある。
本書には心中物の芝居に対する批評が登場する。そこでは「「人間が死のう」と決意することくらい絶望的なものはないのに、この浄瑠璃には二人ののっぴきならぬ気持や絶望感よりも、その死を「美化する」ことにかかっているようだ」と手厳しく批判する(129頁)。現代人の感覚から心中物に感じる拒否感と重なるところがある。芝居の世界の中々食べていけないところも現代と重なる。

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